サッカー豆知識
サッカーの名言からサッカーを知る!? 名選手から名監督となったヨハン・クライフの名言
公開:2012年11月30日
サッカーをもっと深く知るためにはどうしたらいいか? すばらしいゴールや驚きのプレー、サッカーを進化させる革命的戦術を生み出したレジェンドたちが残した言葉から、サッカーを考えてみるのはどうでしょう? サッカーのエッセンスが詰まった名言からサッカーを知る。お子さんを通じてサッカーに触れるようになった方には馴染みのない少し古い話も出てきますが、知識がなくてもわかるように、できるだけわかりやすく、肩の力を抜いて読めるショートコラムにしようと思います。「サッカーを考えるヒント」になれば幸いです。今回はサッカーの奥深さが味わえるあのオレンジ色の14番の残したお話しです。
サッカーはシンプルだ。しかしサッカーをシンプルにプレーすることは難しい“Soccer is simple, but it is difficult to play simple.”ヨハン・クライフ(オランダ)
■バルセロナの基礎となったクライフのサッカー
現代サッカーを席巻するFCバルセロナ。別次元のパス回しで多くの人たちを魅了するバルサのサッカーの礎を築いたのが“空飛ぶオランダ人(フライング・ダッチマン)”と呼ばれたヨハン・クライフです。1970年代に欧州最優秀選手(バロンドール)3回、圧倒的なテクニックと卓越した戦術眼で、ちょうどのいまのバルサのようにサッカーに新しい次元を示していた「トータルフットボール」の中心選手として活躍しました。攻めと守りの役割分担が現在よりもはっきりしていた当時、フィールドプレイヤー10人がめまぐるしくポジションを入れ替えるトータルフットボールにおいて、クライフはときには試合を自在にコントロールする司令塔、あるときは抜群の嗅覚を持った点取り屋と、あらゆるポジションでその才能を発揮する希代の万能選手でした。軸足の後ろにボールを通して切り返す「クライフ・ターン」という技に名前が残っている、本当にすごい選手なんです。
この言葉はそのクライフが残した言葉です。サッカーの真理をあらわしていると思いませんか?
■メッシよりすごい? 名選手から名監督へ
じゃあ、そのクライフって人はメッシよりすごいの? イニエスタより、シャビより上手いの? ときどき論争になる過去の選手と現在の選手の比較ですが、サッカー自体が進化しているので、選手を比べてどちらがすごいと言うことにあまり意味はないと思います。それでもクライフが現役の選手よりはっきりと優れている点。それは指導者としても超一流の実績を残しているところです。メッシやイニエスタ、シャビにはまだ現役生活が残されていますから、指導者として成功するかどうかはわかりません。クライフは現役引退後、古巣バルサを率いて1990年からリーガエスパニョーラ4連覇を果たしているのです。当時のバルサは“ドリーム・チーム”と呼ばれ、歴代最強、史上最強と呼ばれました。
「名選手、名監督にあらず」
これもサッカーの名言のひとつですが、クライフはこの言葉を覆した、数少ない「名選手、名監督たる」例でしょう。名選手は自分ができることを他人に教えるのが苦手な傾向にあると言われています。「なぜこんな簡単なことができないんだ?」と選手のプレーを不思議そうに見て、実際練習でも一番上手い。そんな元名選手の監督はさぞもどかしいでしょうね。
ではなぜクライフは監督としても成功できたのか。ひとつは選手に恵まれていたこと。後にバルサの監督として活躍するグアルディオラ、ラウドルップやストイチコフ、ロマリーオなど豪華メンバーのオンパレード。その超一流の選手たちを掌握するのに、クライフの超々一流のサッカー技術が説得力を持ちました。
柏レイソルでもプレーしたことのあるブルガリアのスター選手、ストイチコフは爆発的な左足のキックで有名でしたが、その気性の荒さから扱いづらい選手として知られていました。しかし、クライフには従順で、
「俺にボールの蹴り方を教えられるのはヨハン・クライフだけだ」
といったのは有名なお話。
エゴイストたちもクライフには従わざるを得なかったわけですね。
■誰よりもサッカーを理解していたクライフの言葉
もうひとつ、クライフが監督として成功したのは、彼がサッカーを誰よりも深く理解していたからではないでしょうか。彼はサッカーにまつわる名言をたくさん残しています。
「ボールを回せ、ボールは疲れない」
練習のとき言ってみたい言葉ですね。同じような言葉で「ボールは汗をかかない」というのはブラジルに古くからある言葉のようです。
「シュートを打たなければ得点できない」「相手チームより多く得点した方が試合に勝てる」
美しく勝つことを信条とするオランダ人らしい言葉。「4-3の試合が一番すばらしい」そんな価値観に基づいたサッカーは多くの人を興奮の渦に巻き込みました。言ってることは単純で当たり前ですが、これもサッカーの真理です。
クライフは誰よりサッカーを理解し、現役時代からピッチで起っていることを正確に把握し、コントロールしていたと言われます。しかしそれは複雑な技術を組み合わせた結果ではなく、できるだけシンプルに、簡単で、正しいプレーを選択していった積み重ねでもあるのです。
大塚一樹(おおつか・かずき)//
育成年代から欧州サッカーまでカテゴリを問わず、サッカーを中心に取材活動を行う。雑誌、webの編集、企業サイトのコンテンツ作成など様々 な役割、仕事を経験し2012年に独立。現在はサッカー、スポーツだけでなく、多種多様な分野の執筆、企画、編集に携わっている。編著に『欧州サッカー6大リーグパーフェクト監督名鑑』、全日本女子バレーボールチームの参謀・渡辺啓太アナリストの『なぜ全日本女子バレーは世界と互角に戦えるのか』を構成。
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文/大塚一樹 写真/サカイク編集部(JA全農杯チビリンピック2012 小学生8人制サッカー 全国決勝大会より)